江戸プロフェッショナル 必殺商売人(1978年)

第12作「江戸プロフェッショナル・必殺商売人」

  • 放送期間(話数):1978/02/17〜1978/08/18(全26話)
  • 放送時間:(金)22:00-22:54
  • レギュラー・準レギュラー出演者
    • 中村主水:藤田まこと
    • 新次:梅宮辰夫
    • 正八:火野正平
    • 秀英尼:鮎川いづみ[いずみ]
    • 花竜:八木孝子(♯1〜14・17・18・20・24・25)
    • 蝶々:森みつる(♯1〜14・17・18・20・24・25)
    • お梶:小柳圭子(♯1〜4・7〜9・11・14・18・21)
    • 与力・坂口:有川 博(♯1・3・8〜10・15・17・21)
    • 中村せん:菅井きん
    • 中村りつ:白木万理
    • おせい:草笛光子
  • スタッフ等
    • 制作:山内久司・仲川利久(朝日放送)/櫻井洋三(松竹)
    • 脚本:野上龍雄/安倍徹郎/國弘威雄/松原佳成/保利吉紀/中村勝行/岡本克己/原田雄一/長田紀生/南谷ヒロミ/辻 良   
    • 音楽:森田公一(※本放送時のEDスタッフクレジット上では「作曲」名義)
    • 作詩:阿久 悠
    • 協力:新演技座
      • ※本放送開始の時期に渡辺プロダクションを退社した主演の藤田が新たに”主宰”として設立した個人事務所。本作以降の”主水シリーズ”にも”協力”として同事務所名がEDクレジット上に表記されている。
    • ナレーション:桜田淳子
    • 次回予告:野島一郎(ABC)
    • 主題歌:「夢ん中」(詞:阿久 悠/曲:森田公一/編:EDISON/唄:小林 旭 クラウンレコード) 
    • 監督:工藤栄一/渡邉祐介/松野宏軌/原田雄一/高坂光幸/石原 興/南野梅雄 
    • 制作協力:京都映画撮影所(松竹撮影所)
    • 制作:朝日放送/松竹
  • オープニングナレーション(作:早坂 暁、ナレーション:桜田淳子)
 「春には春の花が咲き 秋には秋の花が咲く わたしの花は何んの色 咲くならそっとすみれ色 目立たぬように咲きましょう 目立てば誰かが手折ります 手折られ花は恨み花 涙色した風下さい 涙色した水下さい」
  • 放送リスト
話数 放送日 サブタイトル 脚本 監督 ゲスト 備考
製作前史 ・「新・仕置人」に続く”中村主水シリーズ”の次回作の方向性として製作陣は久々に視聴率面でも(特に関西地区で)好評を得た「新・仕置人」の人気を重視して同作品との連続性を持たせる(その端的な証左として、本作の序盤では劇中における裏稼業者の呼称は”商売人”ではなく”仕置人”としていた事、裏稼業を”仕置”と表現している点が挙げられる)一方で、これまで”主水”路線やシリーズ全体を通じても扱われてこなかったテーマ・設定を導入し、明確な変化を付けることを決定(「中村主水」シリーズ第6弾)。その方針の下でキャスティング面で「新・仕置人」の正八(火野正平)、「仕事屋稼業」のおせい(草笛光子)を再登板(草笛自身は「からくり人・血風編」含め3度目のシリーズレギュラー登板。本作のEDクレジットでは”起こし”演出によってキャスト名を表記)させた他、”新顔”として梅宮辰夫を起用(梅宮はシリーズ開始当初の段階では東映専属として活動していたため、松竹製作の本シリーズへの出演は叶わない状況にあったが、1977年のテレビドラマ「明日の刑事」(TBS系)・「青春の門・自立篇」(東宝)への出演以降、東映専属の縛りが事実上なくなり、他の映画会社(及びその系列プロダクション)製作による作品にも本格進出するようになっていたことが同レギュラー打診のきっかけとなった)。主水と正八、新次とおせいという2チームの”商売人”が普段は相互に不信感を抱きつつも、”殺しのプロフェッショナル”という共通意識のみをもって仕置において協力関係を結ぶ、というシリーズ初となるの”殺し屋チームの二分化”とそれによって生じる微妙な関係性が本作の物語世界を象る主要素として導入された(この設定を受けて、本作では元締の存在は実質上排され、”商売人”組織を構成する四者何れも内部での力関係も並列で取り扱われている)。
・また”中村家”の描写についても、主水(藤田まこと)の嫁・りつ(白木万理)が懐妊するという設定を導入。主水が”殺し屋の自分が果たして子供を持ってよいものか”と”平凡な家庭人”と”凄腕の殺し屋”という二つの顔を持つが故の葛藤を覚え、自身や家族の将来に対して苦悩するというテーマも劇中の随所で描かれることとなった。
・このほか、殺陣演出も大幅な見直しが図られ、特に同心・役人等一人の相手を一撃で仕留めるパターンが定着しつつあった主水の仕置シーンについては、本作では”複数の標的の手下たちを一人で剣術を駆使して倒す”、”一人を標的として殺しを仕掛ける場合でも一発で仕留めるのではなく何度も繰り返し刃を振りかざす”といった派手な殺陣が複数エピソードで描かれた(派手さ・華麗さを重視した主水の殺陣演出がなされたのはシリーズ中でも本作のみであり、「仕事人」以降は”セコ付き”のパターンが定着する)。
・第2作「仕置人」より多数回ゲスト出演してきた鮎川いづみが尼僧・秀英尼役でシリーズ初レギュラー入り。本作での好演が契機となり、この後、鮎川は第14作「翔べ!必殺うらごろし」でのおねむ役を経て、「仕事人」シリーズにも密偵・「何でも屋の加代」役で足がけ6年に渡って(「仕事人」(鮎川は1979年12月より出演)〜「仕事人Ⅴ・激闘編」(1986年7月終了)まで)レギュラー出演、後期「必殺」を象徴する女性キャストとしてシリーズ史にその名を残す事に。
・これまで主題歌・挿入歌含めシリーズの劇中音楽全般を手がけていた平尾昌晃がスケジュール多忙(この年1月に自身の門下である畑中葉子とのデュオ名義で「カナダからの手紙」を発表、歌手活動を再び本格化させたことが主な要因)により「必殺」から一時降板。代わって森田公一が本作(及び次作の「必殺からくり人・富獄百景殺し旅」)の劇中音楽を担当することとなった。尚、本作で森田が手がけた主題歌「夢ん中」のEDクレジットでの曲名表記につき、同回のみ「夢の中」と表記されている(同曲製作当初の仮曲名が「夢の中」であったことの名残。歌唱を担当した小林旭サイドの意向により後に曲名を「夢ん中」に変更の上、収録・発表された)
1 283 1978/02/17 女房妊娠主水慌てる 野上龍雄 工藤栄一 斎藤こず恵(美代)/小松方正(政五郎)/片桐竜次(安造)/北見唯一(伊兵衛)/田中弘史(弥助)/駒田眞紀(お君)  
2 284 1978/02/24 誘拐されて女よろこぶ 安倍徹郎 工藤栄一 風吹ジュン(おうら)/金田龍之介(藤兵ヱ)/牧 冬吉(弥造)  
3 285 1978/03/03 むかし夫婦いま他人 野上龍雄 渡邉祐介 中条きよし(佐久間平馬)/伊沢一郎(上総屋利平ヱ) ・後に「続・仕事人」〜「仕事人Ⅳ」までの「仕事人」シリーズ及び「必殺仕切人」の計4作に「三味線屋の勇次」役で長期レギュラー出演することとなる中条きよしが同回ゲストとしてシリーズ初出演。
4 286 1978/03/10 お上が認めた商売人 安倍徹郎 渡邉祐介 芦屋雁之助(河内山宗俊)/小坂一也(松平右京亮広正)/須藤 健(茶坊主・高山三山) ・「からくり人」シリーズのレギュラーキャスト・芦屋雁之助が別役でゲスト出演。
5 287 1978/03/17 空桶で唄う女の怨みうた 中村勝行 松野宏軌 ・織本順吉(三州屋与兵ヱ)/須賀不二男(榊原直周)/平野雅昭(幣間六助)/宮部昭夫(秋月弥三郎) ・時のカラオケブームに呼応して製作された回。特別ゲストにコミックソング「演歌チャンチャカチャン」がヒット中の平野雅昭を迎える(本作では同回を初め、放映当時の世相・流行を反映させたエピソードが幾度か製作され、この試みが後の「仕事人」シリーズにおけるパロディ・バラエティ演出の多用に繋がった)。
6 288 1978/03/24 手折られ花は怨み花 岡本克己 渡邉祐介 島田順司(伊平)/白石奈緒美(みの)/横森 久(越後屋)/田畑猛雄(井本兵衛)  
7 289 1978/03/31 嘘か真実かまことが嘘か 中村勝行 原田雄一 御木本伸介(高森源次郎)/葉山良二(大前田英五郎)/戸浦六宏(茂作)/服部妙子(小梅)  
8 290 1978/04/07 夢売ります手折れ花 長田紀生 高坂光幸 藤村志保(北岡菊)/新田昌玄(谷口弥三郎)/丹古母鬼馬二(まむしの六助)/荒砂ゆき(おしの)/山岡徹也(大和屋儀兵衛)/岩田直二(足立竜人) ・同回より熊本県での同シリーズ放送ネット局が熊本放送(TBS系)からテレビ熊本(フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日のトリプルネット系列)に、長野県での放送ネット局が信越放送(TBS系)から長野放送(フジテレビ系)に移行。
9 291 1978/04/21 非行の黒い館は蟻地獄 中村勝行 松野宏軌 滝田裕介(神谷仙之助)/藤岡重慶(大蔵屋利兵ヱ)/江幡高志(虎河豚の権次) ・同回より山口放送(日本テレビ系)が同時ネットを開始(尚、この同時ネット開始に先駆けて、第1話・第3話を番組販売扱いで放送)。
10 292 1978/04/28 不況に新商売の倒産屋 保利吉紀 松野宏軌 草薙幸二郎(美濃屋太兵ヱ)/堺左千夫(天満屋宗衛ヱ)/高峰圭二(久六)/磯村みどり(おもん)  
11 293 1978/05/05 女体が舞台の弁天小僧 安倍徹郎 高坂光幸 ピーター(矢之助)/安井昌二(京屋庄兵ヱ)/弓 恵子(老女・藤尾)/原口 剛(服部源蔵)/大橋壮多(半吉) ・「からくり人・血風編」のレギュラー・ピーターが別役でゲスト出演。
12 294 1978/05/12 裏口を憎む男にない明日 保利吉紀 原田雄一 桜木健一(藤堂兵馬)/荒谷公之(久米玄一郎)/小笠原良知(服部格之進)/北村英三(与兵ヱ)  
13 295 1978/05/19 裏の稼業にまた裏稼業 野上龍雄 渡邉祐介 吉沢京子(おいね)/佐々木剛(灸吉)/大関優子[佳那晃子](お栄)/吉田義夫(重右ヱ門)/遠藤征慈(二丁目の仙造) ・同回の劇中にておせい(草笛光子)が「仕事屋稼業」の”嶋屋おせい”と同一人物であることが明らかに。
14 296 1978/05/26 忠義を売って得を取れ! 國弘威雄 松野宏軌 石山律雄(忠助)/佐藤万理(小菊)/五味龍太郎(平田勘兵ヱ)  
15 297 1978/06/02 商人に迫る脅しの証言無用 保利吉紀 高坂光幸 永井智雄(向島のご隠居)/梅津 栄(倉田屋治兵衛)/内田昌玄(東吉)/村田みゆき(おたみ)  
16 298 1978/06/09 殺して怯えた三人の女 中村勝行
原田雄一
原田雄一 倉石 功(喜三郎)/茅島成美(おつな)/片桐夕子(おきよ)/鳥居恵子(おけい)  
17 299 1978/06/16 仕掛けの罠に仕掛けする 松原佳成 松野宏軌 多々良純(風切の矢造)/藤田美保子(さち)/唐沢民賢(剣持軍兵衛)/早川 保(猫目の銀次)  
18 300 1978/06/23 殺された主水は夢ん中 安倍徹郎 石原 興 菅貫太郎(政吉)/今井健二(清五郎)/弓 恵子(およう)/神田 隆(三造)/江幡高志(多平) ・シリーズ通算300話達成。同回は公式でも「必殺300回記念回」と銘打たれ、シリーズ初期より複数のエピソードで悪役を演じた今井健二・菅貫太郎・弓恵子・神田 隆・江幡高志がゲスト出演。冒頭では”中村主水役・藤田まことがタクシーに乗車(因みにこのタクシーの運転手役は正八役の火野正平)しながら居眠りをしている”という設定の元、その夢の中に主水の扮装をした藤田を今井らが突如殺しにかかるという特別シーンが用意されたほか、同回放送終了後には300回記念イベントとして番組関係者立会いの下で”悪人供養”が催された。
・初期より同シリーズのメイン撮影技師を担当する石原興の本編監督初担当回。以降、後期シリーズで複数回にわたり撮影兼任で演出を担当。
19 301 1978/06/30 親にないしょの片道切符 南谷ヒロミ 高坂光幸 頭師佳孝(加賀屋庄太郎)/雪代敬子(おとく)/須賀不二男(北見屋)/須藤 健(庄左エ門)  
20 302 1978/07/07 花嫁に迫る舅の横恋慕 國弘威雄 原田雄一 長谷川明男(己之吉)/結城しのぶ(お美代)/荒砂ゆき(お京)/鷲尾真知子(おたき)/山本 清(伊兵衛)/佐野 守(多一郎)  
21 303 1978/07/14 暴走を操る悪の大暴走 保利吉紀 高坂光幸 栗田ひろみ(おしま)/高峰圭二(次郎)/根岸一正(弥助)/片岡 功(さぶ)  
22 304 1978/07/21 殺した奴をまた殺す 辻 良 原田雄一 稲葉義男(蔵間)/清水紘治(京極)/城所英夫(榊原) ・外道商売人・京極(清水紘治)は、自身と結託した筆頭与力の奉行就任によるに公権力の実効支配を目論み、その目的を秘して新任したばかりの南町奉行暗殺の裏仕事を主水に依頼。この一件が引き金になり、これまで仲間内を除いて裏稼業の世界でも全く知られていなかった”殺し屋”としての主水の正体が初めて同業者に気付かれ、窮地に立たされる事に(同エピソードを契機として「仕置人」での初登場時より継承されてきた”裏社会で誰も知らない謎の存在”としての主水の設定が破綻。本作に続く「仕事人」シリーズでは一転して、有力な元締とも一定の付き合いを持つ”広く闇社会に名の知られた仕事人”という設定の下で主水の”裏の顔”が描かれるようになった)。
23 305 1978/07/28 他人の不幸で荒稼ぎ 松原佳成 南野梅雄 左右田一平(青木兵馬)/木村 元(心源坊一角)/辻 萬長(荒巻伝九郎)/早川絵美(茜)/小原秀明(青木数馬)  
24 306 1978/08/04 罠にはまって泣く主水 辻 良 高坂光幸 亀石征一郎(安五郎)/幸真喜子(たえ)/加藤和恵(おはん)  
25 307 1978/08/11 毒を食わせて店食う女 中村勝行 南野梅雄 入川保則(長次)/本阿弥周子(おりょう)  
26 308 1978/08/18 毒牙に噛まれた商売人 安倍徹郎 工藤栄一 山本麟一(蛭子屋卯兵ヱ)/石橋蓮司(根来)/桜井浩子(おりん)/波田久夫(東兵ヱ) ・新次(梅宮辰夫)が殉職。
・「仕事屋稼業」「からくり人・血風編」そして本作と計3作でレギュラー登板した草笛光子は本作をもってシリーズから勇退。
製作後の展開 ・本作における新機軸として導入された”2チームの殺し屋の対立とプロとしての意識に基づく協力関係の構築”や”裏稼業に身を置く者が新しい命を授かることの葛藤”というテーマや、”カラオケブーム”をベースに製作された第5話に代表される当時の流行・世相を取り入れたパロディ・ギャグ色を前面に押し出したエピソードの挿入といった取り組みは、”シリーズ最高傑作”とまで謳われた「主水」路線の前作「新・仕置人」を上回る視聴率の上昇に大きく貢献(「新・仕置人」の平均は関西15%・関東10%なのに対し、本作の平均は関西17%・関東14%)。この結果は後の「仕事人」シリーズの製作に当たって大きな影響を与えることとなった(「新・仕事人」ではおりく(山田五十鈴)・勇次(中条きよし)親子と主水一派の対立とプロフェッショナルとしての意識に基づいた協力・信頼関係の構築、「仕事人Ⅳ」ではかつて自らが請け負った”仕事”でその標的となった娘を養子として迎える秀(三田村邦彦)の苦悩・葛藤といった本作と類似したテーマが重点的に描かれたほか、「新・仕事人」の頃からパロディ色の強いエピソードやバラエティ的な演出手法を取り入れたシーンが数多く製作・挿入されるようになり、シリーズ全体の基本的な作風もソフトタッチに転換。これらの試みが後の「仕事人Ⅲ」〜「仕事人Ⅳ」の時期に最盛を極めることとなる”仕事人ブーム”の布石となった)。

  • 最終更新:2015-07-05 17:24:41

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