必殺必中仕事屋稼業(1975年)

第5作「必殺必中仕事屋稼業」

  • 放送期間(話数):1975/01/04〜1975/06/27(全26話)
  • 放送時間:(土)22:00-22:55(TBS系、1975/03/29放送まで)→(金)22:00-22:55(NET<テレビ朝日系>、1975/04/04放送〜)
    • 1975年3月31日よりTBS系・NET系の在阪準キー局のネットチェンジ(”腸捻転解消”)が行われた事に伴う放送枠変更。
  • レギュラー・準レギュラー出演者
    • 知らぬ顔の半兵衛:緒形 拳
    • 侍くずれの政吉:林 隆三
    • 利助:岡本信人(♯1〜16・18〜26)
    • おまき:芹 明香(♯7〜9・11・12・15・17・19・21〜26)
    • 源五郎:大塚吾郎
    • お春:中尾ミエ
    • 嶋屋おせい:草笛光子
  • スタッフ等
    • 制作:山内久司・仲川利久(朝日放送)/櫻井洋三(松竹)
    • 脚本:國弘威雄/猪又憲吾/安倍徹郎/野上龍雄/村尾 昭/松原佳成/下飯坂菊馬/石川孝人/素 一路[保利吉紀]/播磨幸治/横光 晃/中村勝行/田上 雄/大工原正泰
    • 音楽:平尾昌晃
    • ナレーション:藤田まこと
    • 主題歌:「さすらいの唄」(詞:片桐和子/曲:平尾昌晃/編:竜崎孝路/唄:小沢深雪 キャニオンレコード)
    • 挿入歌:「夜空の慕情」(詞:片桐和子/曲:平尾昌晃/編:竜崎孝路/唄:小沢深雪 キャニオンレコード)
    • 監督:三隅研次/工藤栄一/松原宏軌/大熊邦也/蔵原惟繕/松本 明
    • 制作協力:京都映画撮影所(松竹撮影所)
    • 制作:朝日放送/松竹
  • オープニングナレーション(作:早坂 暁、ナレーション:藤田まこと)
 「金に生きるは下品に過ぎる 恋に生きるは切な過ぎる 出世に生きるはくたびれる とかくこの世は一天地六 命ぎりぎり勝負を賭ける 仕事はよろず引き受けましょう 大小遠近男女を問わず 委細面談 仕事屋稼業」
  • エンディングナレーション(第1話のみ、作:早坂 暁、ナレーション:藤田まこと)
 「どうせあの世も地獄と決めた 命がっさい勝負に賭けて 燃えてみようか仕事屋稼業 ようござんすね、ようござんすね 勝負!」
  • 放送リスト
話数 放送日 サブタイトル 脚本 監督 ゲスト 備考
製作前史 ・第1作「仕掛人」で藤枝梅安役を演じた緒形拳が再登板。本作では「仕掛人」で演じた”殺しのプロ”である梅安とは打って変わり、裏稼業のキャリアの浅い博打好きのそば屋主人・利兵衛役を好演。一人の博打好きな道楽者が裏稼業の世界に偶然入り込み、様々な悪を仕留めて行く中で徐々に”プロの仕事屋”へと変貌していく様を描いた”裏稼業者としての成長ストーリー”が本作のストーリー上での重要テーマとして掲げられた。
・本作で緒形とコンビを組む林隆三は、過去に本作製作担当の山内久司のプロデュース作品(「お荷物小荷物」など)に多数出演した実績があるほか、過去に緒形とも朝日放送-TBS系ドラマ「豆腐屋の四季」(1969年放送。同作も山内のプロデュース作品)で緒形の弟役を演じた経験があったこと、更に過去2度の同シリーズゲスト出演での好演が決定打となっての本作起用となった。
・「仕掛人」「助け人走る」とこれまで「非主水シリーズ」で元締を演じた山村聰に代わる新たな元締役として草笛光子がシリーズ初参加(シリーズ初の女元締)。草笛は本作以降「必殺からくり人・血風編」「江戸プロフェッショナル・必殺商売人」(同作では本作で演じる「おせい」役で登板)にもレギュラー出演、後の山田五十鈴、京マチ子へと繋がる同シリーズにおける「女元締」の基本イメージを艶のある演技で確立する。
・前作「暗闇仕留人」で降板した津坂匡章(秋野太作)・野川由美子に代わる”密偵”ポジションとして岡本信人(当時、主にTBS系の石井ふく子・川俣公明製作ドラマでの活躍が顕著だった岡本の起用は、第1作「仕掛人」・第3作「助け人走る」における山村聰や、第4作「暗闇仕留人」における石坂浩二と同じく、からキャスティング面の重要方針となっていた”ホームドラマ要素の導入”を踏まえてのものとされる)、中尾ミエがシリーズ初参加(但し、中尾の本作での配役は、佳境まで夫・半兵衛の裏稼業の事実を知らない、蕎麦屋の女将の役であり、「殺し」や偵察活動には一切関わっていない)。中尾はこれ以降、「必殺仕業人」「新・必殺仕置人」と「主水」シリーズで連続登板、強気な女密偵役を好演する。
・本作の作品世界を象徴する要素として”ギャンブル”の要素を、そしてストーリー上の重要テーマとして”裏稼業者としての成長物語”、”生き別れの実の親子(おせい・政吉)が裏稼業の元締・配下として再会することによって生じる微妙な関係性”といった時代劇としては異端の要素が取り入れられたのは、当時同シリーズの裏番組として放映中であった日本テレビ系「傷だらけの天使」の人気の背景にあった同作品のアウトロー・自由奔放さを重視した作風に対して、同様の要素を取り込むことで、「傷だらけ―」からの視聴率奪還を狙う目的があったためとされる。この試みは放送開始早々から功を奏し、序盤から高視聴率をマーク。一時はその好調ぶりから山内は「必殺必中」路線を今後の「必殺」の看板路線としたいという構想を持っていたとされる。
1 123 1975/01/04 出たとこ勝負 野上龍雄
村尾 昭
下飯坂菊馬
三隅研次 石橋蓮司(与力・三村敬十郎)/水原麻記(みよ)/唐沢民賢(中山)/伊吹新吾 ・本作のサブタイトルの形式は「〜勝負」で統一。
2 124 1975/01/11 一発勝負 村尾 昭 三隅研次 ジュディ・オング(おしの)/菅貫太郎(朝倉主膳)/五味龍太郎(軍十郎) ・後に「必殺からくり人」「新・必殺からくり人・東海道五十三次殺し旅」の2作でレギュラー登板する事になるジュディ・オングがシリーズ初登場(尚、これより以前に「必殺」とほぼ同スタッフにより製作された「おしどり右京捕物車」にレギュラー出演しており、この出演が「必殺」への起用の契機となった)。
3 125 1975/01/18 いかさま大勝負 野上龍雄 工藤栄一 和田浩治(茂作)/桃井かおり(おはつ)/穂積隆信(和泉屋与兵衛)/山口朱美(お袖)  
4 126 1975/01/25 逆転勝負 村尾 昭 工藤栄一 菊 容子(おすみ)/今井健二(弥三)/高木 均(島帰りの吉五郎)/川村真樹  
5 127 1975/02/01 忍んで勝負 國弘威雄 松本 明 多々良純(牢名主・もぐらの留三)/小林勝彦(小坂)/松平純子/原田あけみ  
6 128 1975/02/08 ぶっつけ勝負 野上龍雄 松野宏軌 天津 敏(吉五郎)/高峰圭二(惣太郎)/梅津 栄(沓掛の甚造)/珠あけみ(おしん)  
7 129 1975/02/15 人質勝負 國弘威雄 松野宏軌 織本順吉(油屋栄三郎)/神田 隆(松五郎)/二本柳俊衣(おしん)/入江慎也(平戸屋惣六) ・同回より準レギュラーとしておまき(芹明香)が登場。
8 130 1975/02/22 寝取られ勝負 下飯坂菊馬 三隅研次 山田吾一(藤左衛門)/林ゆたか(忠太郎)/小野恵子(おきぬ)/島村昌子(おうめ) ・TBS系放映期での関西地区シリーズ最高視聴率(34.2%)を記録。
9 131 1975/03/01 からくり勝負 松原佳成 松野宏軌 山城新伍(古田玄蕃)/田辺靖雄/高樹蓉子(みよ)/谷口 完(諸角)  
10 132 1975/03/08 売られて勝負 播磨幸治 三隅研次 真木洋子(おゆみ)/早川 保(仙次)/近江輝子/山村弘三  
11 133 1975/03/15 表を裏で勝負 石川孝人 松野宏軌 草薙幸二郎(宇佐美)/浜田寅彦(伏見屋藤兵衛)/北川美佳/多川美智子  
12 134 1975/03/22 いろはで勝負 素 一路
(保利吉紀)
松本 明 東野孝彦[英心](徳三)/長谷川明男(仙一)/小笠原良知(金二)/森崎由紀 ・1987年のシリーズ終了まで多数エピソードの脚本を担当した保利吉紀(当時のペンネームは「素一路」)のシリーズ初参加作品。
13 135 1975/03/29 度胸で勝負 猪又憲吾 松野宏軌 岡田英次(板倉屋藤兵衛)/美川陽一郎(大原頼母)/藤岡重慶(朽木藩留守居役・脇坂)/堀内一市 ・腸捻転解消(在阪ネットチェンジ)に伴い、1975年4月よりTBS系土曜22時枠からNET系金曜22時枠に系列・放送枠を移行。当該ネットチェンジに伴う視聴率対策としてメインゲストとして同回と第14話(NET系での初放映回)の2週連続で岡田英次をメインゲストとして起用、シリーズ初となる前後編エピソードを製作。
・当該ネットチェンジに際して、当時NET系はTBS系と比べて単一ネットでの地方系列局が少なかったため、これを境にTBS系列(またはTBS系とNET系(または他のネット系列)とのクロスネット)の地方局で放送の継続を決定した局でも同時ネットではなく週遅れの番組販売扱いでの時差ネットへの移行を余儀なくされる局が続出(ネットチェンジ直後の時点では岩手放送・青森テレビ・東北放送・福島テレビ・テレビ山梨・山陰放送・テレビ高知・大分放送・宮崎放送・琉球放送の計10局が時差ネットへと切替え)。また、ヒット番組である必殺シリーズを手放すことで土曜22時枠の急激な視聴率低下を危惧したTBSが新たな在阪ネット局・毎日放送に対し、「必殺」とほぼ同じ趣向の時代劇作品の製作を要望、その結果、同心たちが裏稼業として社会悪への成敗を下すという同シリーズ(特に「中村主水シリーズ」)と酷似した内容の「影同心」(東映・MBSの共同制作)がネットチェンジと同時に新たに開始され、これまでの視聴習慣から、朝日放送の営業エリアである大阪をはじめとして、ネットチェンジ後も同時ネットを継続することとなった放送局のエリアに住む多数の視聴者も本作の時間枠移動に気づかず、「影同心」を「必殺の新シリーズ」と誤認。年明け早々からの各メディア媒体での大々的なネットチェンジ・時間枠変更の告知は結局功を奏さず、TBS系で放映されていた時期には関西地区で平均30%近くまであった視聴率がこのネットチェンジを契機に一気に12%台にまで急落。また、半兵衛(緒形拳)の殺し技の武器として剃刀を使用していた事に対し業界団体からのクレームが入る等、内容面での問題も抱えるようになり、過去最高ともいえる好調ぶりを博した放送前期から一転、後期は一時シリーズの打切りが一部スタッフの間で検討されるほどの苦境に立たされることに。
・前編(第13話)は「弱者の恨みを晴らす」という元来の「仕置・仕事」目的ではなく「現金調達」のために「殺し」を断行するという同シリーズ史上でも異色ともいえる展開(これは本作が主要人物に(実質上)博打打ちを生業とする人物を置くなど、全体を通じて「ギャンブル」の要素を強く意識した物語設定がなされていたことに起因する)。
14 136 1975/04/04 招かれて勝負 猪又憲吾 工藤栄一 岡田英次(板倉屋藤兵衛)/亀石征一郎/新藤恵美/頭師孝雄/沢村宗之助
15 137 1975/04/11 大当りで勝負 大工原正泰 大熊邦也 山本 亘(岩岡鉄五郎)/戸浦六宏(淀屋伊三郎)/榊原るみ(弥生)/大橋壮多  
16 138 1975/04/18 仕上げて勝負 安倍徹郎 蔵原惟繕 嵯峨三智子(おらん)/内田朝雄(国五郎)/菅貫太郎(捨三)/剣持伴紀(長次)/山岸映子 ・同回のメインゲスト・嵯峨三智子の実母である山田五十鈴は同回の放送を見て製作サイドに同シリーズへの出演を希望。この山田側の意向に応えて次作「必殺仕置屋稼業」へのゲスト出演(第15話)が実現、後の「必殺からくり人」へのレギュラー起用のきっかけに。
17 139 1975/04/25 悟りて勝負 横光 晃 大熊邦也 池部 良(弥兵衛)/渥美国泰(鳴海屋儀右ヱ門)/関根世津子(おたみ)/志賀 勝/洒井靖乃  
18 140 1975/05/02 はめ手で勝負 松原佳成 松野宏軌 睦 五郎/左 時枝(梓)/城所英夫(黒田策二郎)/五味龍太郎(安達大作)/轟 謙二  
19 141 1975/05/09 生かして勝負 横光 晃 蔵原惟繕 浜村 純(桧屋伝蔵)/井上昭文(大山栄之進)/池 玲子(お照)/水谷邦久(忠七)  
20 142 1975/05/16 負けて勝負 田上 雄 松本 明 津川雅彦(伊三郎)/小坂一也/二宮さよ子(お照)/入江慎也/大迫英喜 ・同回の仕置はメイン悪役・伊三郎(津川雅彦)を大損させる目的でトランプのポーカー勝負を仕掛ける内容(「殺し」は行われず。第13話同様、「ギャンブル」を本作における物語設定のテーマに据えた事に起因するもの)。
・主に(1987年までの)連続ドラマシリーズとしての「必殺」最末期、及びレギュラー終了後のスペシャル版、レギュラー復活版の「必殺仕事人・激突!」で多数エピソードを執筆した田上雄の初脚本担当回。
21 143 1975/05/23 飛び入りで勝負 中村勝行 松野宏軌 寺田 農(銀次)/御木本伸介(与兵ヱ)/ゼンジー北京/香山秀美(お民)  
22 144 1975/05/30 脅して勝負 横光 晃 工藤栄一 入川保則/稲葉義男(伝右衛門)/上野山功一(神尾仙三郎)/中村孝雄(富造)/原田あけみ(おみよ)/中井啓輔/成瀬正孝  
23 145 1975/06/06 取り込まれて勝負 大工原正泰 大熊邦也 赤座美代子(おみの)/小松方正(与力・村上又七郎)/河原崎次郎(相模屋伊三郎)/富田浩太郎  
24 146 1975/06/13 知られて勝負 石川孝人 松野宏軌 浜畑賢吉(伊八)/市毛良枝(お久)/川合伸旺(小田切平之介)/宮部昭夫 後に「必殺からくり人・血風編」でレギュラー登板する浜畑賢吉が同回のメインゲストとしてシリーズ初出演。
25 147 1975/06/20 乱れて勝負 素 一路
(保利吉紀)
松本 明 紀比呂子(おしの)/梅津 栄/浜 伸二/柳原久仁夫  
26 148 1975/06/27 どたんば勝負 村尾 昭 工藤栄一 大木 実(熊谷弥九郎)/堀勝之祐(亥之吉)/島 米八(捨三)/黛浩太郎 ・政吉(林隆三)、利助(岡本信人)が殉職。
・同回のラストシーン(最後の仕置からおせいが自害を試みるも伝兵衛に厳しく諭される場面、伝兵衛が追われ身となり同心たちに追われながら町内を逃げ回る場面、事情を知らぬお春(中尾ミエ)のいる蕎麦屋にこっそりと仕置で得た金を投げ入れる場面、後日談として、お春が南部牛追い唄を店の中で歌い、そこに繋がる形で江戸を離れ遠く離れた地で同じ唄を口ずさみながら”裏稼業”に生きる決心を固めた伝兵衛の姿を捉えた場面)は緒形や工藤栄一、脚本担当の村尾昭らが同回撮影時にセッティングされた討議の場で出たアイディアを軸として考え出されたものであったとされている。
・一時”腸捻転解消”の影響から急激な視聴率の低落に悩まされた本作も最終盤にかけてやや復調傾向に転換、更なる視聴率回復を目指して、次回作では再び強い人気を誇る中村主水(藤田まこと)を三度再登板させての「必殺仕置屋稼業」を制作・放送。

  • 最終更新:2015-07-17 04:32:52

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