必殺仕舞人(1981年)
第16作「必殺仕舞人」
- 放送期間(話数):1981/02/06〜1981/05/01(全13話)
- 放送時間:(金)22:00-22:54
- レギュラー・準レギュラー出演者(♯58〜84まで)
- 坂東京山:京マチ子
- 直次郎:本田博太郎
- おはな:西崎みどり
- おまつ:小柳圭子
- さくら:石屋智子
- きく:尾崎弥枝
- ぼたん:芦原 薫
- うめ:工藤時子
- はぎ:高見町子
- 春海尼:宮田圭子
- 善行尼:原 泉
- 晋松:高橋悦史
- スタッフ等
- プロデューサー:山内久司・仲川利久(朝日放送)/櫻井洋三(松竹)
- 脚本:野上龍雄/保利吉紀/石森史郎/吉田 剛/筒井ともみ/長瀬未代子/林企太子
- 音楽:平尾昌晃
- OPナレーション:中条きよし
- 主題歌:「風の旅人」(詞:山口洋子/曲:平尾昌晃/編:竜崎孝路/唄:本田博太郎 CBSソニー)
- 監督:工藤栄一/松野宏軌/原田雄一/井上梅次/黒田義之/都築一興
- 協力:エグラン演技集団/新演技座
- 制作協力:京都映画撮影所(松竹撮影所)
- 制作:朝日放送/松竹
- オープニングナレーション(作:工藤栄一/山内久司、ナレーション:中条きよし)※冒頭の”箱根八里は――”の部分のみ、中条が節付きで歌う体裁が採られている。
「箱根八里は――馬でも越すが 越すに越されぬこの世の峠 西が曇れば涙雨 東が曇れば怨み雨 どうせこの世は生き地獄 代わって晴らそう女の涙 この世の苦しみ仕舞人 」
- 放送リスト
話数 | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 監督 | ゲスト | 備考 | |
製作前史 | ・シリーズ第7作の「必殺仕業人」(1976年1月〜7月放送)以降、暫く「必殺」の放送・製作ローテーションとして、”中村主水”シリーズを原則2クール〜3クール放送し、その合間にもう一つの「必殺」の軸として(「血風編」を除き)山田五十鈴を看板キャストに据えた「必殺からくり人」シリーズを1クール限定で放映するという体裁を保ち続けてきた。しかし、このローテーションの定着によりマンネリに陥る虞があると判断した当時の番組制作陣は、「からくり人」シリーズの第4弾「富嶽百景殺し旅」(1978年8月〜11月放送)の後番組に、本来であれば次に順番が回ってくるはずの”主水”シリーズの新作の製作を敢えて一旦回避し、新規視聴者層の開拓を目指した新機軸作品として”主水”シリーズと同じ2クール作品扱いで、オカルト・怪奇現象をテーマとした「翔べ!必殺うらごろし」(1978年12月〜1979年5月放送)を製作するという試みを図った。しかし、放映開始序盤の段階から本作の(当時の時代劇作品としての概念からすれば)異色すぎる世界観やストーリー展開・キャラクター設定が視聴者に受け入れられず、深刻な視聴率低迷を招く結果となり、「うらごろし」は全26回予定を3話分残して打切り(全23回で終了)。同作の低迷を重く見た製作サイドは”「必殺」の挽回はもはや見込めない”と判断、次回作を「シリーズ最終作品」として製作する方針を採る事とし、この時点で従前の「”主水”シリーズを2クール〜3クール、”からくり人”シリーズを1クール限定で放送」というローテーション組みは一旦”崩壊”する格好となった。 ・しかし、その「シリーズ最終作品」との位置づけで製作された「必殺仕事人」が、徹底した原点回帰を目指したハードボイルドタッチの展開が(特に旧来の番組ファンを中心とする)視聴者に受け入れられた事に加え、本作で”新顔”として登板することとなった三田村邦彦(錺職の秀役)が女性視聴者の間で”アイドル的”な注目を集める存在となりつつあったことも更なる追い風となって、開始初期の段階から視聴率は徐々に回復。この傾向に「必殺」の将来的可能性を感じ取った製作陣は、当初の方針を一旦据え置き、視聴率が完全に安定したと判断できるまでの間は「仕事人」の製作・放映を当面継続させる方針に転換。3クール目以降の”中期”では「仕事人」シリーズの名物女キャラとなる加代(鮎川いずみ)を初めとする新キャラクターの起用、メインの”仕事人”の一角を担う畷左門(伊吹吾郎)の大胆なキャラクター設定変更といった大幅な番組リニューアルを断行すると共に、更なる女性視聴者層開拓を目指して三田村の積極的なプロモーションも作品製作と連動させる形で展開(三田村が歌った劇中歌「いま走れ!いま生きる!」の製作や同曲にかかる番組独自プロモーション映像の製作・放映などはこの方針の一環として行われたものとされる)。そして、放送開始から1年を過ぎ、3クール目以降に導入した設定が定着し、三田村も”人気俳優”として完全に認知されるに至った後期では、これまでの1年間の放送で完成されつつあった設定に基づくストーリー展開のパターン化させる事で「仕事人」としての基本的世界観の完成を目指す方向性が志向され、この”約束事”の範囲を大きく逸脱しない”保守的”ともいえるストーリー展開によって、作品世界はソフトタッチなものへと変化。この作風の変容によって、ハード路線が目立った旧来の「必殺」自体に抵抗感を持っていた視聴者層の掘り起こしが促され、結果的に「仕事人」は幅広い世代の視聴者層の開拓と、それに裏打ちされた中期以降の視聴率の安定ぶりを背景に、6クール超・全84回というロングラン作品へと発展、製作当初にあった「必殺」シリーズ自体の打切り話も同作の長期放送の過程の中で自然消滅した。 ・「仕事人」の放送延長の条件である”視聴率の安定”という点が、中期〜後期へと推移していく段階で確乎たるものとなっていく中で、製作陣は「仕事人」後のシリーズの方向性について模索。その中で、一旦は「うらごろし」の低迷による打切りによって”崩壊”した放送ローテーションの”修復”を図るべく、「仕事人」の後継作を「からくり人」の系譜を意識した”1クール放送の殺し旅路線”とする方針が固められた。その上で、「仕事人」で開拓した女性視聴者層を繋ぎとめる為の方策として、”頼み人”に当たる存在を原則として女性に限定し、”駆け込み寺に寄せられた不幸な女たちの恨みを晴らす”事を次回作における”裏稼業”のテーマとして採用。また、作風の急激な変化による視聴者離れを避けるために、”裏稼業”を営む一味の表の顔を”民謡手踊りの旅一座”と設定し、各回で全国各地に伝承される有名な民謡を取り入れる事で「仕事人」で確立した”娯楽時代劇”としての「必殺」の作品イメージを踏襲すると共に、全体的なストーリー展開も基本的に「仕事人」後期に確立したパターン重視のソフト路線を継承することとなり、こうして次回作「必殺仕舞人」(同タイトルも本作のテーマを基に「女の苦しみや悲しみをお仕舞にする」という意味を込めてネーミングされたものとされる)が製作・放映される運びとなった。 ・本作の主演には、上記の”女性の怨みを晴らす”という基本テーマから女性、しかも「からくり人」の看板であった山田五十鈴と双璧を為す大物女優の起用が検討され、結果、過去に製作担当の山内久司プロデュース作品に主演を務めた(「日本の嫁シリーズ・嫁ふたり」(1973年放送))縁から京マチ子をキャスティング。京は本作で表稼業として民謡手踊りの一座を率いながら各地の駆け込み寺に寄せられた女の恨みを晴らすべく”殺し旅”を続ける凄腕の仕置人としての顔を持つ尼僧・坂東京山役を好演、これを契機に翌年の「新・必殺仕舞人」、1984年放送の「必殺仕切人」と本作を含め計3作で主演を務め、暫く”非主水”路線の看板として定着する事となる。また、情報収集役にして一座の踊子達のリーダー格に当たる若娘・おはな役には、過去、「仕留人」「仕業人」で主題歌を担当した他、女優としても過去数回ゲスト出演の経験を持つ西崎みどりを起用。西崎も本作を契機に以降「必殺橋掛人」(1985年放送)まで5作連続、”非主水”シリーズ作品に連続登板し、”仕事人”の看板女優となった加代役・鮎川いずみと並んで、後期シリーズを代表する女性キャストとして定着する事に。 ・このほか、”新顔”として、これまでのシリーズにおける新劇出身俳優重視(緒形拳・山崎努・吉田日出子・津坂匡章ら、過去の主力のレギュラーキャストは新劇出身者が中心となっていた)のキャスティングを継承する形で高橋悦史と本田博太郎を起用。本田はエンディング曲「風の旅人」の歌唱も担当、これ以降「仕事人Ⅴ」までレギュラーキャストによる主題歌歌唱が恒例化する。 ・オープニングナレーション担当の中条きよしは、「仕事人」の続編「新・必殺仕事人」へのレギュラー起用がスペシャル版(「恐怖の大仕事」)への出演を契機に内定した事を受けて、その”予行”を兼ねる形で本作のナレーションを務める事となった。 |
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1 | 430 | 1981/02/06 | 恨みが呼んでる佐渡おけさ | 野上龍雄 | 工藤栄一 | 田島令子(おこう)/戸浦六宏(戸塚修理) | ・本作のサブタイトルには各回の舞台となる地で伝承される民謡の曲名(歌詞の場合もあり)が含まれている(第2話以降は地名も併記)。 |
2 | 431 | 1981/02/13 | さんさ時雨は涙雨 -仙台- |
吉田 剛 | 松野宏軌 | 森次晃嗣(三浦)/高瀬春奈(志乃)/大下哲夫 | |
3 | 432 | 1981/02/20 | 織姫悲しや郡上節 -郡上八幡- |
保利吉紀 | 原田雄一 | 早乙女愛(おかよ)/佐藤仁哉(音松)/谷口 完 | |
4 | 433 | 1981/02/27 | 江差追分母娘の別れ -北海道・江差- |
筒井ともみ | 原田雄一 | 仁和令子(おしん)/谷口 香(お栄)/森山紹秀 | |
5 | 434 | 1981/03/06 | 津軽じょんがら嘆きのひと節 -青森- |
長瀬未代子 | 松野宏軌 | 吉沢京子(なつ)/久保にしき(すわ)/山口嘉三(誠二郎(早雲))/西山辰夫 | |
6 | 435 | 1981/03/13 | 花笠音頭は地獄で踊れ -山形- |
石森史郎 | 都築一興 | はしだのりひこ(彦市)/高木二郎 | ・同回で殺しの現場に遭遇した事がきっかけとなり、おはな(西崎みどり)が”仕舞人”にサポート役として仲間入り。 |
7 | 436 | 1981/03/20 | 丹後の宮津の嘆き唄 -京都・宮津- |
吉田 剛 | 松野宏軌 | 佐藤万理(お初)/小林芳宏/綾川 香 | ・同回の題材となっている民謡は「宮津節」。 |
8 | 437 | 1981/03/27 | 坊さんかんざし買うを見た -高知- |
吉田 剛 | 松野宏軌 | 藤木敬士[孝](宗純)/上月左知子(お倉)/木村弓美 | ・同回の題材となっている民謡は「よさこい節」。 |
9 | 438 | 1981/04/03 | 女泣かせた鹿児島おはら節 -鹿児島- |
保利吉紀 | 黒田義之 | 赤座美代子(おしの)/亀石征一郎(浪花の辰蔵)/飛鳥裕子(おさと)/田畑猛雄 | |
10 | 439 | 1981/04/10 | 身を投げ生きる安里屋ユンタ -琉球- |
長瀬未代子 | 原田雄一 | テレサ野田(クバ)/林ゆたか(知念)/里見和香(マヤ) | |
11 | 440 | 1981/04/17 | 秋田音頭は国盗り家老の冥土唄 -秋田- |
林企太子 | 原田雄一 | 千野弘美(おさと)/早川 保(川越藩家老・森藤左衛門) | |
12 | 441 | 1981/04/24 | おちゃれ節騙した男へ波しぶき -紀伊- |
石森史郎 | 井上梅次 | 竹井みどり(おみつ)/片岡秀太郎(尾上鶴之丞)/浜田 晃/加賀邦男 | |
13 | 442 | 1981/05/01 | 深川節唄って三途の川渡れ -江戸- |
石森史郎 | 井上梅次 | 二宮さよ子(聖妙尼)/片桐竜次(帷子の辰)/杉江廣太郎 | ・「からくり人・富嶽百景殺し旅」以来、約2年ぶりとなる”1クール限定の道中物”として、放送ローテーションの修復を図る目的で投入された本作は、”女の怨みを晴らす”というテーマ設定に基づいた無難ともいえるストーリー展開や、各地の民謡を挿入する事で”郷愁”を想起させる作風が受け入れられ、「仕事人」から続く好調ぶりを無事に守り切って全13回の放送予定を終了。「仕事人」ではない作品でも安定した数字を確保できるという確信を本作で得た製作陣は”主水シリーズを軸として、その間に非主水シリーズを原則1クール放送”という放映・製作ローテーションを今後も継続させる方針を固めると共に、本作の可能性を期して、「からくり人」に代わる”非主水”シリーズの定番として出演者・設定・作風をそのまま継承・発展させる形での本作の続編作品(「新・必殺仕舞人」)の製作計画に着手することとなった。 |
- 最終更新:2015-07-13 07:02:49