必殺からくり人・富獄百景殺し旅(1978年)

第13作「必殺からくり人・富嶽百景殺し旅」

  • 放送期間(話数):1978/08/25〜1978/11/24(全14話)
  • 放送時間:(金)22:00-22:54
  • レギュラー・準レギュラー出演者
    • 唐十郎:沖 雅也
    • 宇蔵:芦屋雁之助
    • うさぎ:高橋洋子(♯1〜4)→真行寺君枝(♯5〜14)
    • 虫の鈴平:江戸家小猫
    • おえい:吉田日出子(♯1・14)
    • 葛飾北斎:小沢栄太郎(♯1・14)
    • 出雲のお艶:山田五十鈴
  • スタッフ等
    • 制作:山内久司・仲川利久(朝日放送)/櫻井洋三(松竹)
    • 脚本:早坂 暁/國弘威雄/保利吉紀/松原佳成/吉田 剛/神波史男/武末 勝/荒馬 間
    • 音楽:森田公一
    • 協力:新演技座
    • ナレーション:吉田日出子
    • 次回予告:野島一郎(ABC)
    • 主題歌:「夢ん中」(詞:阿久 悠/曲:森田公一/編:EDISON/唄:小林 旭 クラウンレコード)
      • 前作「江戸プロフェッショナル・必殺商売人」から継続使用(但し本作では1番のパートを使用)。 
    • 監督:工藤栄一/松野宏軌/高坂光幸/原田雄一/黒木和雄/石原 興 
    • 制作協力:京都映画撮影所(松竹撮影所)
    • 制作:朝日放送/松竹
  • オープニングナレーション(作:早坂 暁、ナレーション:吉田日出子)(※劇中で吉田が演じた北斎の娘・おえいがからくり人に仕事を頼む設定で語りを担当)
 「神や仏がいなさって、悪を罰して下さると、小さいときに聞きました それはやさしい慰めと、大きくなって知りました やさしさ頼りに生きては来たが やさしさだけでは生きてはいけぬ 早く来てくれからくり人 」
  • 放送リスト
話数 放送日 サブタイトル 脚本 監督 ゲスト 備考
製作前史 前作「商売人」終了後の次回作として、ここ2年間の製作・放送ローテーション上の慣例に倣って「必殺からくり人」シリーズの継続、「新・からくり人」の続編的作品として位置づけられた新作製作の方針が内定(「からくり人」シリーズ第4弾)。「からくり人」シリーズとしての前作にあたる「新・必殺からくり人」で好評を得た、”旅の一座が江戸期に活躍した実在の絵師から仕事の依頼を受け、その絵師の描いた著名な作品に”あぶり出し”の技法によって密やかに仕込まれた”標的”に繋がるヒントに基づいて殺し旅を繰り広げる”という作品フォーマットをほぼ継承。前作のベースとなった安藤広重の「東海道五十三次」に代わって、本作では葛飾北斎の著名な連作の錦絵「富嶽三十六景」をストーリー作りの題材に採用し(尚、番組タイトルや劇中では「富嶽百景」の名称を採用しているが、「百景」は厳密には北斎の晩年期に創作された「三十六景」とは別個の作品(絵本)であり、製作サイドがどのような意図で「三十六景」ではなく「百景」の名称が劇中で使用したのかについての詳細は不明となっている)、北斎、または「三十六景」にまつわる実在のエピソード(北斎が生涯で96回もの居住移転を繰り返したという逸話が残るほどの”引越し好き”であった事、「富嶽三十六景」製作に当たり、西洋由来の絵具「ベロ藍(ベロリン)」を特に多用した事、天保年間に繁栄を極めた江戸・馬喰町の地本問屋・永寿堂(西村屋与八)が北斎の浮世絵を多数出版しており、「三十六景」も永寿堂が版元であった事等)をフィクション設定(「ベロ藍」の購入費用捻出のために娘を遊郭に売りに出そうと試みる、版元の永寿堂が裏稼業とも精通しており、「殺しの要素」を織り交ぜた事を広重の「東海道五十三次」の人気の要因と推測して、同じく「殺しの要素」を取り入れた作品の製作を北斎に依頼したことが「三十六景」誕生の契機となっている、等)を付加させる形でストーリーの出発点となる設定として導入。過去の「からくり人」シリーズ同様、ストーリー製作上の方針も「虚実混合」路線が本作でも継承された。
・「新・からくり人」の正式な続編としての位置づけの下で企画された経緯から、本作も「からくり人」シリーズの看板となった山田五十鈴が「新・からくり人」と同様の役柄・お艶(但し役名クレジットは「泣き節お艶」から「出雲のお艶」に変更され、これに伴ってお艶が座長を務める”裏稼業の一味”である旅一座の名称も「天保太夫一座」から「出雲太夫一座」に変更されている)で、同じく「からくり人」シリーズの常連・芦屋雁之助も、前作のブラ平とほぼ同様の役設定(一座の副座長格)の”どじょうの宇蔵”でそれぞれ連続登板。両者に加え、過去にシリーズ2作(「仕掛人」「仕置屋稼業」)にレギュラー登板した実績に加え、それぞれの作品で演じたキャラクター(棺桶の錠、市松)が番組ファンの中で根強い支持を誇っていた点が考慮される形で本作のメインキャスト格として沖雅也が3度目のシリーズ再登板。本作ではこれまでシリーズで演じてきた役柄の中では最も”庶民”に近い要素を持った敏腕のからくり人・唐十郎役を好演(尚、唐十郎の役柄設定は企画当初の段階では「侍崩れの殺し屋」となっており、殺し技も刀剣を用いたものが予定されていたが、これまでごく一般的な市井の人物像とは大きくかけ離れた設定の役柄をシリーズの中で演じてきた背景から、過去出演作での役柄との明確な区別を図りたいとの意向を持っていた現場サイドが撮影開始の段階でこの初期設定にクレームをつけたため、急遽「元板前の経歴を持つ永寿堂配下の殺し屋」という設定に変更。殺し技もこれに応じて釣竿に仕込まれた針を使ったものに変更された)。尚、過去の「からくり人」作品で山田の娘役を演じてきたジュディ・オングは台湾映画や他局系列作品(フジ系「江戸の旋風」)出演による多忙を理由に本作への出演を辞退している(オングに代わる新顔として高橋洋子・江戸家小猫を起用)。
1 309 1978/08/25 江戸 日本橋 早坂 暁 黒木和雄 岡田英次(西村屋永寿堂与八)/山岡徹也(藤兵衛)/北村英三(馬琴)/青木和代(おヤス) ・製作当初の時点での同回のサブタイトル仮案は「富士には殺しがよく似合う」(当時の一部テレビ情報誌ではこの仮題をサブタイトルとして記載したものもあった)。当初は本作のサブタイトルの方式について、特に「富嶽―」の個別作品名に拘らず、前作「商売人」に倣って各話のテーマや特徴的なシーンに応した短文調のタイトルを付ける予定となっていたが、本放送開始までの段階で各話の舞台となる場所に応じて「富嶽―」の個別作品名をそのままタイトルに引用(但し、一部の回については原作品名を修正して引用)する方針に変更された。
・「江戸日本橋」は「富嶽三十六景」で最初に製作された作品の名称。
2 310 1978/09/01 隠田の水車 神波史男 松野宏軌 堺左千夫(清兵ヱ)/外山高士(源八郎)/遠藤征慈(金次)/早川絵美(おたね) ・「隠田の水車」は「富嶽―」で9番目に製作された作品の名称。
3 311 1978/09/08 駿州片倉茶園ノ不二 國弘威雄 松野宏軌 大木 実(玉木千阿弥)/堀 雄二(土井玄蕃)/高峰圭二(溝口兵江)/佐藤万理(雪絵)/大竹修造(小松仙之助)/西山辰夫(片倉屋)/吉本真由美(琴路) ・「駿州片倉茶園ノ不二」は「富嶽―」で30番目に製作された作品の名称。
4 312 1978/09/15 神奈川沖波裏 國弘威雄 松野宏軌 御木本伸介(上総屋)/黒部 進(丑松)/大林丈史(寅太)/内田勝正(亥之助)/三浦真弓(お静)/汐路 章(魚甚)/谷口 完(魚辰) ・同回をもってうさぎ役・高橋洋子が体調不良により急遽降板。
・「神奈川沖波裏」は「富嶽―」で21番目に製作された作品の名称。富士山を背景として荒波の中を三隻の木船が翻弄される様子を白色と”ベロ藍”(紺青)塗料を大胆に用いて描き出した「富嶽―」の中でも特に著名な作品。
5 313 1978/09/22 本所立川 吉田 剛 石原 興 花沢徳衛(隼の俊次)/青木義朗(神尾主水正)/阿藤 海[快](用心棒) ・同回よりうさぎ役のキャストが真行寺君枝に交替。
・後期シリーズにて多数エピソードの脚本を手がけた吉田剛のシリーズ初脚本担当回。
・「本所立川」は「富嶽―」で5番目に製作された作品の名称。
6 314 1978/09/29 下目黒 保利吉紀 松野宏軌 亀石征一郎(前田伊三郎)/南條 豊(友吉)/堀田真三(木島作蔵)/村田吉次郎(孫兵ヱ)/村田みゆき(村田みゆき) ・「下目黒」は「富嶽―」で10番目に制作された作品の名称。
7 315 1978/10/06 駿州江尻 山浦健郎 高坂光幸 真木洋子(お京)/今井健二(政五郎)/辻 萬長(渡世人・仁助)/加藤さよ子(美乃) ・「駿州江尻」は「富嶽―」で35番目に製作された作品の名称。
8 316 1978/10/13 甲州犬目峠 松原佳成 高坂光幸 中村孝雄(冬木大作)/江幡高志(黄金屋幸兵衛)/勝部演之(神尾主膳)/原口 剛(守田玄蕃)/原田英子(八重) ・「甲州犬目峠」は「富嶽―」で41番目に製作された作品の名称(36番目の作品「東海道江尻田子の裏略圖」の発表後、「富嶽―」の人気を受けて追加で製作された全10編のうちの1つ)。
9 317 1978/10/20 深川万年橋下 武末 勝 松野宏軌 岡崎二朗(本間左近)/成瀬昌彦(町名主・徳兵ヱ)/横森 久(堀田忠典)/木村 元(大五郎)/井原千鶴子(おたき)/田中 綾[綾子](ともえ) ・「深川万年橋下」は「富嶽―」で6番目に製作された作品の名称。
10 318 1978/10/27 隅田川関屋の里 松原佳成 松野宏軌 草薙幸二郎(稲取権三郎)/住吉道博(新助)/宮部昭夫(鬼丸主膳)/五味龍太郎(永井源八)/原田清人(小関左内)/大木正司(轟涉) ・「隅田川関屋の里」は「富嶽―」で13番目に製作された作品の名称。
11 319 1978/11/03 甲州三坂の水面 保利吉紀 石原 興 高杉早苗(おもん)/深江章喜(塩沢伝十郎)/佐野アツ子(おそで)/山本 清(久兵ヱ)/三遊亭円之助(富蔵)/永野達雄(近江屋) ・第3作「助け人走る」のレギュラーキャスト・佐野アツ子が別役でゲスト出演。
・同回の題材である「甲州三坂水面」は「富嶽―」で42番目に製作(追加製作)された作品の名称。
12 320 1978/11/10 東海道金谷 荒馬 間 原田雄一 田口 計(佐塚忠五郎)/伊沢一郎(富士見屋総介)/梅津 栄(嘉平)/高野真二(宗方直光)/今出川西紀(おふじ)/松山照夫(川圧屋) ・同回の題材である「東海道金谷ノ不二」は「富嶽―」で37番目に製作(追加製作)された作品の名称。
13 321 1978/11/17 尾州不二見原 武末 勝
山浦弘靖
原田雄一 中島 葵(おりん)/山本 亘(清吉)/穂高 稔(尾張屋)/綾川 香(大野典膳) ・「尾州不二見原」は「富嶽―」で40番目に製作(追加製作)された作品の名称。
14 322 1978/11/24 凱風快晴 安倍徹郎 松野宏軌 清水紘治(赤星銀平)/早川雄三(梅屋)/西田 良(中村歌八) ・「凱風快晴」は「富嶽―」で33番目に製作された作品の名称。赤く鮮やかに染まった富士の山を大きく描き出した派手で大胆な構図・色調から「赤富士」の通称で親しまれる「富嶽ー」の中でもとりわけ人気の高い作品の一つ。尚、同回も初回同様、本放送直前でサブタイトルの変更が行われており、製作当初では一般的に認知度の高い通称の「赤富士」の方をサブタイトルに引用する予定となっていた(当時の一部テレビ情報誌にも「赤富士」を同回サブタイトルとして記載したものあり)。
製作後の展開 ・ストーリーの基軸となる要素や主要キャストを「新・からくり人」からそのまま流用して企画・製作されたために「新・からくり人」からの明確な変化が乏しい作風となったことに対し、シリーズの作品毎での新基軸導入の姿勢に期待する視聴者層からは”二番煎じ””マンネリ”との批判が出たものの、本作も概ね「新・からくり人」と同様の安定した支持を獲得。これを受けて、製作サイドの間で一時、今後のシリーズの方向性として”主水”シリーズと「からくり人」路線を今後のシリーズの二本柱とし、その合間に両路線とは全く異なるテーマを取り入れた完全な新作を放送するという構想が持ち上がり、この構想の下で両路線の看板である藤田まことについては2クール分(26話前後)、山田についても1クール分(13話前後)のスケジュールを早い段階で押さえた上で両シリーズの新作の企画に着手し、その間を両路線に拘らない完全新作で埋めるという手筈となった。
・しかしその完全新作として2クール(26話)放送の予定で製作された「翔べ!必殺うらごろし」が”超常現象”をテーマに取り上げた奇抜なストーリー展開や特異な登場キャラクターの設定が受け入れられず視聴率低迷の事態を招いた事や、出演キャストの急病・怪我等のアクシデントが重なり現場サイドの混乱が生じた事も重なり予定よりも早く放送打切りが決定(全26話放送予定を全23話に短縮)。「うらごろし」の視聴率低迷は”腸捻転解消”当初の頃の低迷期を上回る深刻ぶり(多くの地域で平均視聴率が10%の大台を大きく下回り、一部では2.1%という壊滅的な視聴率を記録した地域もあった)だった事を重く見た製作側は、今後シリーズを続けたとしても視聴率の改善は困難と判断して一旦シリーズ自体の終了を内定、「必殺」最終作の予定でシリーズの顔・中村主水(藤田まこと)を再登板させて原点回帰を試みた「必殺仕事人」が製作されることとなった(但し、「仕事人」は開始序盤から旧来の「必殺」ファンからの評判が高く、視聴率面でも改善の傾向が見られたことから、シリーズ終了の方針から一転して同作の放送延長を決定(最終的には6クール超まで放送を延長)、同作人気の安定ぶりを背景として「仕事人」路線を基幹とする形で「必殺」枠自体も存続する運びとなった。
一方、「からくり人」の新作製作計画は「仕事人」をシリーズ最終作として製作する方針が内定した段階で消滅(結果、本作が「からくり人」シリーズの最終作として扱われることに)。「からくり人」新作への出演を前提として予め押さえられていた山田の1クール分のスケジュール消化については、「仕事人」序盤で急遽体調不良で降板した元締・鹿蔵役の(二代目)中村雁治郎の後任の元締役への起用という形で振替られることとなり(「仕事人」第7話〜21話まで出演)、この際に演じた女元締・おとわ役の好評ぶりが後の「仕事人シリーズ」における元締格ポジションのベテラン女仕事人・おりく役への山田の再起用に繋がった。
尚、「新・からくり人」と本作で一定の評価を残した”旅一座による殺し旅”という基本プロットと”1クールのみの放送”の原則は「非主水」シリーズ製作に当たっても継承され、後に「仕事人」に転じた山田に代わる女元締役に京マチ子を迎えて製作された「仕事人」の後続作、「必殺仕舞人」という形で具体化された。

  • 最終更新:2015-06-29 06:21:42

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