必殺からくり人(1976年)
第8作「必殺からくり人」
- 放送期間(話数):1976/07/30〜1976/10/22(全13話)
- 放送時間:(金)22:00-22:54
- レギュラー・準レギュラー出演者
- 夢屋時次郎:緒形 拳(♯1〜8・10・12)
- 仕掛の天平:森田健作
- 花乃屋とんぼ:ジュディ・オング
- 八寸のへろ松:間 寛平(♯1〜10・12・13)
- 曇り:須賀不二男(♯1・3・12・13)
- 八尺の藤兵ヱ:芦屋雁之助
- 花乃屋仇吉:山田五十鈴
- スタッフ等
- 制作:山内久司・仲川利久(朝日放送)/櫻井洋三(松竹)
- 脚本:早坂 暁/中村勝行/保利吉紀
- 音楽:平尾昌晃
- 編曲:竜崎孝路
- 撮影:石原 興
- 劇中ナレーション:松倉一義(ABC)
- 次回予告ナレーション:野島一郎(ABC)
- オープニングの語りは主要レギュラー出演者(山田・緒形・森田・雁之助・オング)が交互にワンフレーズずつ担当。
- 主題歌:「負犬の唄(ブルース)」(詞:荒木一郎/曲:平尾昌晃/編:竜崎孝路/唄:川谷拓三 キャニオンレコード)
- 監督:工藤栄一/蔵原惟繕/大熊邦也/松野宏軌
- 制作協力:京都映画撮影所(松竹撮影所)
- 制作:朝日放送/松竹
- オープニングナレーション(作:早坂 暁、ナレーション:山田五十鈴、緒形 拳、森田健作、芦屋雁之助、ジュディ・オング)
「雨が降ったら傘をさす つらい話は胸をさす 娘十八 紅をさす 魔がさす 棹さす 将棋さす 世間の人は指をさす 許せぬ悪に とどめさす」
- 放送リスト
話数 | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 監督 | ゲスト | 備考 | |
製作前史 | ・第1作「必殺仕掛人」、第5作「必殺必中仕事屋稼業」に続き、緒形拳が3度目のシリーズ登板。 ・戦前から戦中・戦後にかけて演劇・映画の世界を牽引した大女優・山田五十鈴が、前作「必殺仕事屋稼業」でのゲスト出演を経て女元締・仇吉役でシリーズレギュラーとして初登板。以後、「からくり人」シリーズ・「必殺仕事人」シリーズと約10年の長きにわたり同様の役回りで複数作にレギュラー登板、同シリーズの”重鎮”として絶大な存在感を発揮する(本作で山田演ずる仇吉の表稼業である”三味線弾き”、及び「三味線の撥を使って敵の首筋を切り裂く」という殺しのスタイルは本作とは異なる人物を演じた以後のレギュラー出演作においてもそのまま踏襲されている)。また、山田同様に後に「からくり人」シリーズ、「必殺仕切人」と、本作含め計4作の「非主水」シリーズで常連レギュラーとして活躍することとなる芦屋雁之助も本作でレギュラー初登板。青春スターのイメージが色濃かった森田健作、ジュディ・オングの起用を含めシリーズ屈指の”異色キャスト陣”のそろい踏みが製作当時話題となった。 ・メインライターとして、これまでのシリーズOPナレーションの大半の台詞を手掛けてきた早坂暁を起用。従来の複数脚本家による持ち回り制を廃し、ほぼ全てのエピソードを早坂が単独で執筆(但し、後半の一部回については早坂のスケジュール都合により、シリーズ常連の脚本家である保利吉紀・中村勝行が代行)。かつて「脱・時代劇」として話題を浚った「天下御免」(NHK、1971年)のメインライターを務めていた早坂らしく、本作でも登場人物の密接な繋がりをベースに、史実と虚実(ドラマオリジナル設定)、そして放送当時の現代の世相を複雑に織り交ぜた挑戦的なエピソードを多数執筆、玄人筋を中心に好評を博し(尚、現代の世相が物語構築の要点として据え置かれたため、本作では各話の本編への導入も現代の情景から劇中世界へと突入していくという異色の演出が採られている)、以後、本作タイトルとその世界観を継承する「からくり人」シリーズが1978年まで「非主水シリーズ」の定番に(「からくり人」シリーズ第1弾)。 ・本作は山田五十鈴らキャスト陣の長期にわたるスケジュール拘束が困難であった(レギュラーキャストが集結する場面が初回では1カットのみ、森田・オングの劇中の台詞も一言のみとなったのもこの理由によるものとされる)や、当時、脚本家の中でもとりわけ”遅筆”であることで知られていた早坂への配慮等から、当初より視聴率の好不調に関係なく1クール(13話)限定での放送となった。これ以降、”非・主水シリーズ”の放送スケジュールは一部の例外を除き(”非主水シリーズ”としてではなく、”主水”シリーズとも”からくり人”とも違う新機軸路線の作品として当初より2クール予定で製作された「翔べ!必殺うらごろし」や、1987年秋の改編でレギュラー枠自体の打ち切りが確定した後に、廃枠までの繋ぎとして2ヶ月限定で製作された「必殺剣劇人」等)、概ね1クール限定での放送が基本となった(但し、前後作の製作上の事情により数回分の増減はあり)。 |
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1 | 205 | 1976/07/30 | 鼠小僧に死化粧をどうぞ | 早坂 暁 | 蔵原惟繕 | 芦田伸介(壷屋蘭兵衛)/財津一郎(鼠小僧次郎吉)/横山道代(お松)/原田英子(お近)/金井進二(与吉) | ・本作サブタイトルの形式は「〜をどうぞ」で統一。 |
2 | 206 | 1976/08/06 | 津軽じょんがらに涙をどうぞ | 早坂 暁 | 蔵原惟繕 | 岡田英次(弥蔵)/花柳喜章(新門辰五郎)/中川三穂子(おゆう)/中島 葵(おえい)/中井啓輔(長右ヱ門)/大橋壮多(弥蔵の配下) | ・同回放送分が第14回ギャラクシー賞(放送批評懇談会制定)・選奨を受賞。 |
3 | 207 | 1976/08/13 | 賭けるなら女房をどうぞ | 早坂 暁 | 工藤栄一 | 青木義朗(備前屋)/草野大悟(麻吉)/古川ロック(魚屋の伝次) | |
4 | 208 | 1976/08/20 | 息子には花婿をどうぞ | 早坂 暁 | 工藤栄一 | 高田美和(邦江)/佐々木功(安斉利正)/原 泉(久)/高峰圭二(村上新之介) | ・後に「必殺仕舞人」シリーズにて善行尼役でレギュラー出演することとなる原泉がシリーズ初出演。 |
5 | 209 | 1976/08/27 | 粗大ゴミは闇夜にどうぞ | 早坂 暁 | 大熊邦也 | 弓 恵子(港屋多恵)/金田龍之介(大前田英五郎)/新田昌玄(北川佐十郎)/内田勝正(やくざ政吉) | |
6 | 210 | 1976/09/03 | 秘めごとは白い素肌にどうぞ | 中村勝行 | 松野宏軌 | 山形 勲(長崎屋)/大関優子[佳那晃子](お藤)/大塚吾郎(伊佐吉)/浜 伸二(高利貸し) | |
7 | 211 | 1976/09/10 | 佐渡からお中元をどうぞ | 早坂 暁 | 松野宏軌 | 柴田美保子(おゆう)/五味龍太郎(氷奉行・葉山)/長島隆一(伝造)/不破 潤(岡っ引・喜八) | ・殺しのパートなし。 |
8 | 212 | 1976/09/17 | 私ハ待ッテル一報ドウゾ | 早坂 暁 | 蔵原惟繕 | 高田敏江(ふゆ)/西崎みどり(せん)/梅津 栄(天斎)/早川 保(新兵ヱ)/荒砂ゆき(ヤス) | |
9 | 213 | 1976/09/24 | 食えなければ江戸へどうぞ | 中村勝行 | 松野宏軌 | 天津 敏(高田屋惣兵ヱ)/小宮 守(弥助)/石山雄大(戻し屋吉五郎)/高樹蓉子(おすえ) | ・時次郎(緒形拳)は登場せず(EDのトップクレジットは天平役の森田健作)。 |
10 | 214 | 1976/10/01 | お上から賞金をどうぞ | 保利吉紀 | 松野宏軌 | 山本麟一(円蔵)/根岸一正(米吉)/吉本真由美(おさと)/穂高 稔(緑水) | |
11 | 215 | 1976/10/08 | 私にも父親をどうぞ | 早坂 暁 | 工藤栄一 | 垂水悟郎(絵師・歌川延重)/藤岡重慶(妻木良正)/武 周暢(大目付・本多) | ・時次郎(緒形拳)は登場せず(EDのトップクレジットは天平役の森田健作)。 ・1976年10月7日〜18日まで、延べ12日間、九州地方の計10会場にて中村主水役・藤田まこと主演により”錦秋特別公演”と銘打って「必殺仕置人・三途の川の乳母車」が上演される(必殺シリーズ作品の舞台化は1974年に「助け人走る」(田村高廣主演・明治座)、1975年に「必殺仕掛人」(緒形拳主演・明治座)と既に2度行われていたが、何れも中村主水の登場しない”非主水”シリーズの舞台化であり、主水を主人公に据えた作品での本格的な舞台化はこの九州地方巡業が初。当該巡業は「仕置屋稼業」〜「仕業人」にかけて起きたテレビ版放送時の藤田のキャストクレジット上の扱いにかかる問題に対して、松竹・朝日放送が藤田側に一定の配慮を示す目的から急遽編成された興行とされている)。 |
12 | 216 | 1976/10/15 | 鳩に豆鉄砲をどうぞ | 早坂 暁 | 蔵原惟繕 | 岸田 森(鳥居耀蔵)/赤座美代子(しぐれ・アキ<二役>)/汐路 章(花沢老人)/洒井 哲(水野忠邦) | ・時次郎(緒形拳)が殉職(このため翌週の最終話のEDクレジットは第9・11話同様、森田健作がトップ扱いに)。 ・同回は早坂のシナリオが撮影開始までに間に合わなかったために、時次郎殉職のシーンを初めに撮った後、順次早坂サイドから送られる各パート毎の原稿に沿って本編撮影が行われた。 |
13 | 217 | 1976/10/22 | 終りに殺陣をどうぞ | 早坂 暁 | 工藤栄一 | 早川雄三(備前屋)/五味龍太郎(喜十郎)/三浦徳子(料亭女将)/笹 吾朗(曇の配下) | ・天平(森田健作)、藤兵ヱ(芦屋雁之助)、そして元締・仇吉(山田五十鈴)が殉職。主人公チームの主要登場人物で生存者がわずか1人のみ(とんぼ(ジュディ・オング)のみ)という結末はハードボイルド路線を基本とした前期シリーズでも異例の展開。 |
製作後の展開 | ・当時、(特に関東地区での)同シリーズの視聴率は総じて低調傾向にあり、そのため事態打開の”最終手段”として製作陣は本作終了後の次回作として、第2作「仕置人」で人気を得た念仏の鉄(演:山崎努)を再登板させて、シリーズ作品初の”続編”となる「新・必殺仕置人」を1年間(52話)放送の予定で企画。しかし、”同じ役を2度は引き受けない”という山崎の方針に加え、第6作「仕事屋稼業」の頃より燻ぶっていた中村主水役・藤田まことのキャストクレジット上での処遇問題、さらには主水の姑・せん役・菅井きんの降板問題(当時、実娘の縁談を控え、同役のイメージからこれが破談になってしまう事を恐れた菅井側からシリーズからの降板の意向が出され、製作サイドとの交渉が難航した一件。詳細は「からくり人・血風編」の項にて記載)の諸事情が重なり製作準備が大幅に遅滞。そのため、先に向こう1年間のスケジュールを抑えていた山崎に鉄役とは別の配役として浪人・土佐ヱ門役を用意、彼を主役に据えて本作のタイトルを継承した「必殺からくり人・血風編」が急遽、企画・放送されることに。 |
- 最終更新:2015-07-17 05:31:04